四国お遍路7番札所・十楽寺|縁切りと縁結び、二つの道が存在する徳島の古刹をツーリングで参拝


雨の阿波市、朱色の竜宮門が見えてきた

その日、空は重たいグレーやった。

徳島県阿波市に向かうバイクのシールドに、細かい雨粒が叩きつけてくる。路面が濡れて、アスファルトが黒光りしちゅう。正直、晴れの日に来たかったけど、お遍路ってそういうもんやない。天気も含めて、巡礼ながよ。

そんなことを考えながら走りよったら、突然視界に飛び込んできた。

朱色と白壁のコントラスト。まるで中国の竜宮城みたいな、異彩を放つ山門。

四国八十八ヶ所、第7番札所・十楽寺(じゅうらくじ)

雨に濡れた朱色が、むしろ鮮やかさを増して見えた。晴れの日より、雨の日の方が似合う寺かもしれん。


十楽寺とは?寺号に込められた深い意味

十楽寺の正式名称は光明山 蓮華院 十楽寺(こうみょうざん れんげいん じゅうらくじ)。高野山真言宗の寺院で、四国八十八ヶ所霊場の第7番札所として知られる。

「十楽」という寺号には深い意味が込められちゅう。

人間が背負う八つの苦難(八苦)——生・老・病・死をはじめとする避けられない苦しみを解き放ち、極楽浄土で受けられる**十の光明に輝く楽しみ(十楽)**が得られるようにと、開基した弘法大師空海が名づけたと伝えられちゅう。

苦しみの数より、楽しみの数の方が多い。そういう希望を、寺号に込めた弘法大師の思いが伝わってくる。

歴史: 大同年間(806〜810年)に弘法大師がこの地を巡教した際、阿弥陀如来を感得して本尊を刻んだのが始まり。創建時は現在地から北に3kmほど離れた十楽谷にあったが、天正年間の長宗我部元親による戦火で焼失。その時、当時の住職が御本尊を自ら背負って火の海から逃げ出したという逸話が残る。その後、寛永年間に現在の場所に再建された。


竜宮門(鐘楼門)|異界への入口

山門をくぐる前に、しばらく立ち止まって見上げた。

朱塗りと白壁のコントラストが鮮やかな竜宮門。十楽寺のシンボルであり、中国の竜宮城を彷彿とさせる独特のデザインが特徴や。四国八十八ヶ所の山門の中でも、ひときわ目を引く存在感がある。

雨の日に見る竜宮門は、まるで異界への入口みたいやった。この門をくぐったら、日常とは違う時間が流れる——そんな感覚になる。

門の両脇には「光明山十楽寺」「四国第七番霊場」の石柱。遍路笠をかぶった先達さんが黙々と歩いて入っていく姿が、この寺の本質を物語っちゅう。


縁切りと縁結び|愛染明王の二つの道

十楽寺で最も話題を集めるのが、中門(遍照殿)の**愛染明王(あいぜんみょうおう)**にまつわる縁切り・縁結びのスポットや。

中門の入口は左右に分かれちゅう。

  • 左から入る → 縁結び
  • 右から入る → 縁切り

「間違えたら逆の運命が待っちゅう」——そんな言い伝えが残るほど、参拝者の間では真剣に語り継がれてきた話や。

実際に中門の前に立ったら、自然と足が止まった。右か、左か。自分が今、何を求めちゅうのかを、否応なく考えさせられる。

お堂の中に祀られた愛染明王は、真っ赤な体に憤怒の形相。複数の腕にはそれぞれ法具を持ち、強烈な存在感を放っちゅう。

この仏様が珍しいのは、人間の欲望や愛着を否定せず、そのエネルギーをそのまま悟りの力に変えるとされる点や。縁切りといっても「相手の不幸を願う呪い」やない。悪縁を断ち切り、良縁へと人生を再出発させるためのもの——十楽寺の縁切りは、そういうポジティブな意味を持つ。

愛染明王の真言: 「オン・マカラギャ・バゾロシュニシャ・バザラサトバ・ジャ・ウン・バン・コク」

雨音に混じるように、静かに唱えてみた。


治眼疾目救歳地蔵尊|目が見えるようになった伝説

境内には、もうひとつ強力な御利益で知られるスポットがある。

治眼疾目救歳地蔵尊(ちがんしつめくさいじぞうそん)

眼病平癒(がんびょうへいゆ)のお地蔵様として、古くから厚い信仰を集めてきた。盲目の母親を連れた遍路がこのお地蔵様に祈願したところ、奇跡的に目が開いたという伝説が直接語り継がれちゅう。

手を合わせてお地蔵様の顔を見上げたら、穏やかな表情が印象的やった。眼病だけやなく「心の目を開く」御利益もあるとされる。

治眼疾目救歳地蔵尊の真言: 「オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ」


光明会館|境内に泊まれる宿坊

境内にはビジネスホテル光明会館が併設されちゅう。一般的なビジネスホテルに近い現代的な設備で、遍路宿泊に最適な宿坊として知られる。宿泊者は朝の勤行への参加も可能。

バイクで区切り打ちをするライダーにとって、こういう宿坊が境内にあるのは非常に助かる。次の札所へのアクセスも考えながら、ここを拠点にするのもええ選択肢や。


十楽寺|参拝情報

項目内容
正式名称光明山 蓮華院 十楽寺
札所番号四国八十八ヶ所 第7番札所
宗派高野山真言宗
本尊阿弥陀如来
所在地徳島県阿波市土成町土成字田中198-2
アクセス自家用車・バイク推奨(公共交通機関は本数が少ない)
宿坊ビジネスホテル光明会館(境内併設)

カフェ山のお遍路ツーリング|まとめ

雨の十楽寺を後にしながら、しばらく余韻が残った。

縁切りと縁結び。眼病平癒の伝説。弘法大師が込めた「苦しみより楽しみが多い人生を」という願い。

派手な観光地やない。でも、手を合わせた時間は確かに静かで、心のノイズが少し消えた気がした。

お遍路は、目的地やなく過程ながよ。雨も、風も、全部込みで巡礼や。

それが、カフェ山のお遍路ツーリング。


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