愛媛県今治市。
タオルの街、造船の街として知られるこの港町には、全国でも珍しい“焼き鳥文化”が根付いている。
それが――
串に刺ささない焼き鳥。
炭火ではなく、鉄板。
じっくりではなく、素早く。
その独自のスタイルが生まれた原点こそ、1961年(昭和36年)創業の老舗
五味鳥 だ。
今回は、今治駅から徒歩約5分。
今治焼き鳥発祥の店として知られる五味鳥を訪れ、鉄板が鳴る夜の時間を味わってきた。
今治焼き鳥とは?全国とまったく違うスタイル
「焼き鳥」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは串に刺さった鶏肉を炭火で焼く姿だろう。
しかし今治では、それがまったく違う。
- 串に刺ささない
- 炭火を使わない
- 鉄板でプレスして焼く
これが“今治焼き鳥”と呼ばれる独自文化だ。
鉄板の上に鶏肉を広げ、重しでぎゅっと押しつけながら焼くことで、
短時間で火が通り、皮はパリッと、脂は余分に落ちる。
この調理法が生まれた背景には、今治という街の気質があると言われている。

せっかちな港町が生んだ合理的な焼き方
今治は古くから商業と造船で栄えた港町。
「待つより動く」
「効率よく仕事を進める」
そんな土地柄から、炭火で時間をかける焼き鳥よりも、
鉄板で一気に焼き上げるスタイルが好まれた。
結果として生まれたのが、
“早くてうまい焼き鳥”。
五味鳥は、その原点とされる店だ。

五味鳥の店舗情報
- 住所:〒794-0027 愛媛県今治市南大門町1丁目1-13
- 電話番号:0898-32-3753
- 営業時間:17:00〜22:00(L.O.21:30)
- 定休日:日曜・祝日、ほか不定休あり
- 支払い方法:現金のみ
- アクセス:JR今治駅東口から徒歩約5分
- 駐車場:専用なし(近隣コインパーキング利用)
赤い看板が目印で、夕方になると次々と人が吸い込まれていく。

店内の雰囲気は“地元の夜”
店内はカウンター席と座敷席。
観光客向けに作られた店というより、
地元の人が仕事帰りに立ち寄る“日常の居酒屋”という空気感だ。
鉄板の前では、肉が焼ける音が絶えず響く。
ジュウッ――。
この音こそ、今治の夜の始まりを告げる合図なのかもしれない。
まずは定番の「かわ」
今治焼き鳥で最初に注文されることが多いのが「かわ」。
鉄板でプレスされ、余分な脂が落ちた皮は、
表面がカリッと香ばしく、中はもっちり。
焼き鳥というより、鉄板料理に近い食感だ。
噛むほどに旨みが広がり、
「これが今治焼き鳥か」と実感させてくれる。

ポテトサラダの安心感
五味鳥のポテトサラダは、奇をてらわない王道タイプ。
派手さはないが、
どこか懐かしく、ほっとする味。
濃すぎず薄すぎず、焼き鳥の合間にちょうどいい存在だ。

締めは名物「せんざんき」
今治焼き鳥の流れで欠かせないのが、唐揚げの「せんざんき」。
外はカリッと香ばしく、
中は驚くほどジューシー。
鉄板焼き鳥で軽くなった口の中を、
最後にしっかり満たしてくれる。
今治では、
- まず皮
- 野菜や一品
- 最後にせんざんき
という流れが“定番コース”として親しまれている。

僕はコーラ、嫁氏は生ビール
この日、僕はお酒が飲めないのでコーラ。
グラスの中で氷がカランと鳴る。
一方、酒豪の嫁氏は生ビール。
泡を一口含んで、無言でうなずく。
同じテーブル、違うグラス。
それでも同じ時間を味わえるのが、こういう店のいいところだ。

観光でも飲み歩きでもない、ただ“その街の夜”
五味鳥は、派手な演出も、映える内装もない。
あるのは、
- 鉄板の音
- 湯気
- 常連の会話
- 長年積み重ねられた匂い
それだけだ。
けれど、そのすべてが
「今治という街」を静かに語っている。
観光名所を巡る旅とは違う、
その土地の日常に少しだけ混ざる時間。
それが五味鳥で過ごす夜だった。

今治に来たら体験したい“本物のご当地グルメ”
今治焼き鳥は、単なる名物料理ではない。
港町の気質と生活から生まれ、
60年以上受け継がれてきた食文化だ。
その原点に立つ五味鳥は、
今治を訪れたなら一度は足を運びたい一軒。
串がなくても、炭がなくても、
焼き鳥はちゃんと“焼き鳥”だった。
鉄板のジュウ音とともに味わう一皿は、
旅の記憶として、きっと長く残る。


■ まとめ
- 今治焼き鳥発祥の老舗「五味鳥」
- 串に刺さず鉄板で焼く独自スタイル
- 皮・ポテサラ・せんざんきが定番
- 観光客も入りやすいアットホームな雰囲気
- 今治の夜を体感できる名店
今治を訪れた夜、
もし赤い看板を見かけたら。
その鉄板の音に、ぜひ身を委ねてみてほしい。

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