高知でコーヒーにこだわるなら、ここは外せない。高知市介良にある「焙煎工房こやま」は、焙煎歴50年のマスターが毎日直火で豆を焼き上げる、本物志向の自家焙煎珈琲専門店だ。バイクツーリングの途中に立ち寄ったつもりが、気づけばコーヒーの概念ごと書き換えられていた。今回はそんな一軒を紹介する。

■焙煎工房こやまとは?高知市介良にある珈琲専門店
焙煎工房こやまは、高知県高知市介良乙に構える自家焙煎の珈琲専門店だ。店名の通り、焙煎にすべてをかけた一軒である。外観は青い看板が目印で、店先には店先には「コーヒー、お持ち帰りできます。」と書かれたのぼりが風に揺れている。テイクアウトできる自家焙煎コーヒー——バイク乗りにはむしろその一言だけで十分だ。店内に入ると、まず香りが迎えてくれる。焙煎の、深くて甘い煙の匂い。チェーン店では絶対に嗅げない類の空気が、店全体に満ちている。

■世界中の豆がガラス瓶に並ぶ、コーヒーの図書館
カウンター脇に置かれた大きな回転棚には、ガラス瓶がずらりと並ぶ。それぞれに産地のカードが添えられており、インドネシア・マンデリン、パナマ・ハートマン農園カトゥーラ、ルワンダ・ホワイトマウンテン、パプアニューギニア・ゴルブラン農園——と、まるで世界地図を眺めているような気分になる。常時ストックは約45種類。そこから週替わりで約12種類を焙煎して店頭に並べる。商社を介さず、世界各国の契約農園から直接仕入れた豆ばかりで、スーパーや量販店では絶対に出会えない希少品種も多い。壁には実際に世界地図が描かれており、産地から糸が引かれてカードが貼られている。旅するバイク乗りとしては、それだけで胸が熱くなった。

■焙煎歴50年のマスターが守る、直火焙煎の技術
店の奥には業務用の直火焙煎機が鎮座している。銀色のずっしりとした機械で、現役で毎日稼働している。マスターの焙煎歴は50年。ブラジルでの研修経験を持ち、信頼する師匠から直伝の技術を受け継いでいる。その日の気温、湿度、豆の状態——すべてを読みながら火加減を調整し、最も旨味が引き出せるポイントを見極めて焼き上げる。「毎日同じには焼けない」と言うほど、繊細で職人的な作業だ。直火焙煎の特徴は、豆の芯まで均一に熱が入ること。それによって引き出されるのが、コーヒー本来の「甘み」と「高い香り」だ。苦みや酸みを前面に出すのではなく、甘みを主役に据えた焙煎スタイルがこやまの個性である。
■実際に飲んでわかった、「冷めても甘い」の意味
席につき、一杯注文した。カップは白磁に銀のラインが入った上品なもので、棚に並んだコレクションの中から選ばれたものだろう。口に含んだ瞬間、まず甘みが来た。苦みより先に、甘みが。それも人工的な甘さではなく、豆そのものが持つ自然な甘み。飲み進めると香りが開いてきて、後味がきれいに消える。雑味がない。そして、しばらくして気づいた。カップの中のコーヒーが冷めていた。それでも、甘みが消えていない。むしろ少し落ち着いて、香りがより明確になっている気さえした。「冷めても美味い」とはよく聞く言葉だが、ここまで体感として納得したのは初めてだった。

■メニューと価格帯。モーニングも充実
メニューはシンプルだ。コーヒーを中心に、モーニングとトーストがある。モーニングは9時から12時ごろまでで、トースト・サラダ・ゆで卵などがセットで800円、コーヒーのおかわりは200円。午後のトーストメニューはバター300円から始まり、シュガーバター、はちみつ塩バター、チーズ、悪魔トースト、ピザトーストなど個性的な種類が揃っている。変わり種として「ロミオ&ジュリエット」500円というメニューもある。グアバのようかんとチーズを使ったブラジルの伝統的なおやつで、「コーヒーにめっちゃ合います!知らんけど!」というメニュー書きが笑いを誘う。珈琲豆の販売は100gあたり900円から。300g以上購入するとテイクアウトコーヒーが1杯無料になるサービスもある。今回はコスタリカとメキシコを購入した。同じ中煎りでも、飲み比べると個性がまるで違う。

■静かな空間と、居心地のよさ
店内はカウンターと奥のテーブル席に分かれており、全体的に落ち着いた内装だ。BGMは控えめで、聞こえるのは豆を挽く音と焙煎機の低いうなりくらい。壁の世界地図を眺めながら、ゆっくりコーヒーを飲める空間になっている。案内書きには「携帯電話の長時間通話、大きい音の着信音、動画再生などはご遠慮ください」とあった。ここはコーヒーと静けさのための場所だ、という店主の意志がはっきり伝わってくる。ツーリング中の休憩に立ち寄るには、少し贅沢すぎるぐらいの空間だった。でも、だからこそよかった。

■アクセス・営業情報
店名:焙煎工房こやま(BAISEN-KOUBOU Koyama)住所:高知県高知市介良乙3026-1営業時間:9:00〜15:00(目安)定休日:月曜日(その他の休みはInstagramで告知)駐車場:あり(無料)Instagram:フォローで割引あり

■まとめ。高知でコーヒーを語るなら、介良まで来い
チェーンでも飲める。コンビニでも飲める。でも、焙煎工房こやまのコーヒーは、ここでしか飲めない。50年かけて磨かれた技術と、世界中から集めた豆と、その日の空気を読んで焼き上げる職人の感覚——全部が重なって、あの一杯になる。冷めても甘いコーヒーの理由は、技術だった。高知市介良、焙煎工房こやま。ツーリングの目的地に、加えていい一軒だ。


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