坂本龍馬が、幼い頃から愛した刀。そう聞くと、目の前の輝きが少し違って見えてきます。
こちらカフェ山、今日も高知を走る。今回は、高知県立坂本龍馬記念館の新館2階で開催されている企画展「土佐ゆかりの刀剣」を見てきました。
記念館にはほかにも見どころがありますが、この記事では刀剣の展示に絞って紹介します。最初に心をつかまれたのは、刀身の精巧さと美しさ。しかし背景を知るにつれ、龍馬と兄、友人、そして故郷とのつながりに惹かれていきました。
廃刀令から150年。「土佐ゆかりの刀剣」展とは
2026年は、廃刀令から150年の節目にあたります。本展では龍馬の刀への愛着をはじめ、土佐の刀工が鍛えた作品や、幕末土佐の人々に関係する刀剣を紹介しています。
刀は身を守る武器であると同時に、武士としての立場や誇りとも結びついていたもの。直筆の手紙なども交えながら、その意味をたどれる展示です。ryoma-kinenkan.jp
僕は刀剣の専門家ではありません。それでも「誰が作り、誰が大切にしたのか」を知ることで、眺める時間がぐっと面白くなりました。名前や年代を覚えるだけでなく、一振りの向こうに人の暮らしが見えてくるのです。

龍馬が幼い頃から愛した脇差「備前長船勝光・宗光」
印象に残った一つが、龍馬が幼い頃から特に愛したと紹介される脇差です。一般に「備前長船勝光・宗光」と呼ばれるこの刀は、室町時代後期の刀工、勝光が叔父の宗光とともに作ったものです。ryoma-kinenkan.jp
龍馬が活躍した幕末より、さらに古い時代に生まれた刀。それを少年時代の龍馬も大切にしていたというのが、なんとも興味深いですね。
龍馬というと、幕末の大きな出来事の中にいる人物として思い浮かべます。でも、好きなものを大事にする少年の姿を想像すると、少し距離が縮まります。
龍馬も、この刀をじっと見つめたことがあったのでしょうか。そんなことを考えながら見ると、刀の美しさに加えて、長い時間の重なりまで感じられる気がしました。

土佐の刀工・左行秀の一振りに残る兄と友人の縁
土佐で腕を振るった刀工、左行秀。読み方は「さのゆきひで」です。今回紹介される行秀の打刀には、龍馬の兄・権平とのつながりがあります。
記念館の解説によると、権平の求めに応じて作られ、龍馬の刀となったのち、友人・甲藤馬太郎の甲冑と交換されたと伝わる一振りです。ryoma-kinenkan.jp
ここは「交換したと伝わる」という点も含めて、物語として心に残りました。兄が注文した刀が弟へ渡り、さらに友人のもとへ。一振りを通して、人と人との関係が見えてきます。
刀だけを見ていれば、美しい工芸品として通り過ぎてしまったかもしれません。しかし、その来歴を知ると「この刀が渡ってきた道筋」にも興味が湧きます。土佐の刀剣を見る面白さは、地元の人物や土地の歴史へ話がつながっていくところにもあると感じました。

先祖の品を身につけたい。龍馬が兄に求めた「吉行」
なかでも心に残ったのが、「吉行」にまつわる話です。
撮影した展示解説には、慶応2年、1866年12月4日、龍馬が兄・権平に手紙を書いたことが記されていました。国の難局に向き合う際に先祖の品を身につけていたいので、甲冑か刀を分けてもらえないか、という願いです。
その願いに応え、兄が選んで贈ったのが、坂本家に伝わる「吉行」でした。
故郷を離れて活動する龍馬にとって、先祖の品にはどんな重みがあったのでしょう。家族や故郷とのつながりを感じられる、心の支えでもあったのかもしれません。これは僕の想像ですが、そう考えると手紙の願いが身近に感じられます。
なお、写真に写る吉行の脇差は、龍馬本人の愛刀ではなく、同じ刀工が作った別の作品です。刀工が同じことと、龍馬が実際に持った刀であることは区別して鑑賞したいところです。

人の手で、ここまで美しくできるのか
物語とともに忘れられないのが、刀そのものの造形です。すっと通った線、緩やかな反り、光を受けた刀身。特に切っ先の精巧さには、つい見入ってしまいました。
現代の工作機械がなかった時代に、どうやってここまで整えられたのか。そんな素朴な疑問が湧くほどです。
日本刀は刀工が鍛えて終わりではありません。研師が砥石を使い分けて形を整え、鋼の肌や刃文の美しさを引き出します。鍛える技と研ぐ技が重なって、鑑賞できる姿になるのですね。刀剣博物館
また、その技術は現代にも受け継がれています。古い刀の現在の輝きも、制作当時の仕上げがそのまま残っているとは限りません。作った人に加え、手入れや研磨を担い、受け継いできた人々にも思いを向けたくなります。
鍔や柄まわりの金具も見逃せませんでした。小さな面積に施された細工や、鉄と金色の組み合わせ。刀身から細部へ目を移すと、また別の職人技に出会えます。


開催期間と坂本龍馬記念館の基本情報
「土佐ゆかりの刀剣」展の会期は、2026年10月10日から12月6日まで。会場は高知県立坂本龍馬記念館の新館2階、企画展示室です。ryoma-kinenkan.jp
所在地は高知市浦戸城山830番地。開館時間は9時から17時で、入館は16時30分頃までが案内されています。企画展開催時の一般観覧料は18歳以上900円、高校生以下は無料。無料駐車場もあります。来館のご案内|高知県立坂本龍馬記念館
※情報は2026年10月18日確認時点。最新情報や撮影の可否は、公式サイトと現地の案内をご確認ください。

美しい刀の向こうに、龍馬の気持ちを想像する
最初は、精巧な刀剣を見てみたいという気持ちでした。ところが展示をたどるうちに、少年時代の愛着、兄や友人との縁、先祖の品を求める想いがつながってきました。
高知で龍馬ゆかりの場所を訪ねるなら、刀から人物に近づく時間も面白いと思います。専門知識がなくても、まずは気になった一振りと、その横の解説から。目の前の美しさが、歴史への入り口になるかもしれません。
小さな幸せ探します。また待ちゆうきね。
参考情報:企画展公式案内、記念館の利用案内、刀剣博物館「作刀工程と研磨」、現地展示解説。


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