【高知県土佐町】河内神社の夫婦杉|樹齢約700年の巨木と七尾の湧水、桑の葉茶を楽しむ旅

高知県土佐郡土佐町南川(みながわ)。茶色く錆びた吊り橋の向こうに、樹齢約700年と伝わる二本の杉が立っている。

今回訪ねたのは、河内神社(かわうちじんじゃ)の夫婦杉(めおとすぎ)。帰り道には七尾の湧水(しちおのゆうすい)で水を汲み、持ち帰った水で桑の葉茶を淹れた。大きな木を見るだけで終わらない、山の時間を一杯のお茶まで持ち帰る旅だった。

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錆びた吊り橋を渡って、河内神社へ

県道から神社へ向かうには、川に架かる吊り橋を渡る。朱色の橋を想像していたら、実際に目の前にあったのは、床も欄干も茶色く錆びた古い橋だった。緑に囲まれた橋を歩くと、少しずつ車道の気配が遠ざかる。

橋の先にあるのは南川地区の河内神社。森に入って鳥居をくぐると、川と風の音が耳に残る。観光地らしい賑わいはない。境内でまず視線を奪われるのは、社殿のそばから空へ伸びる二本の巨大な幹だ。

河内神社の夫婦杉は樹齢約700年

夫婦杉の二本は、推定樹齢約700年。樹高は資料によって約50メートルと約48メートル、幹回りはそれぞれ約7メートルと紹介されている。数値の細かな違いは測定方法や資料によるが、境内で見上げると、数字以上にその高さを感じる。「人里の巨木たち」夫婦杉の記録、「樹の国・日本」巨樹紹介

「夫婦」といっても、ただ二本並んでいるから美しいのではない。長い歳月を同じ場所で過ごしてきた二本の姿に、人のほうが物語を重ねたくなる。幹の近くに立ち、見上げる。上の枝まで一度には収まらない。御神木なので、触れずに少し離れて眺めた。

山師たちが託した、願いと感謝

境内の案内板には、この杉にまつわる伝承が記されている。昔、徳島の山師が瀬戸川地区の木材を川へ出す際、山の神に作業の安全を祈願した。仕事が無事に終わると、その感謝として杉を植えたと伝えられる。

山で働く人にとって、木材を川へ運ぶ作業は暮らしに直結する仕事だったのだろう。だからこそ、始める前に願い、終えたあとに感謝する。二本の杉を見ていると、その順番が胸に残った。ただし、植樹の経緯は伝承であり、史実として断定するものではない。

案内板によると、境内の造成時には根元付近が約2メートル埋まったという。それでも二本は今も力強く枝を広げている。現在見えている幹の根元が、長い歴史のすべてではないのかもしれない。

帰り道に、七尾の湧水を汲む

神社をあとにして立ち寄ったのは、同じ土佐町南川の七尾の湧水。「七尾」は「ななお」ではなく「しちお」と読む。環境省の資料にも「しちおのゆうすい」と記載され、南川地域で親しまれている湧水として紹介されている。環境省「高知県の代表的な湧水」

ただし、私が訪れた日の水量は少なかった。岩肌から伸びた管の先を細い水が流れ、ボトルが満たされるまで、しばらく待つことになった。資料にある水量の説明と、この日の現地の様子は分けて伝えておきたい。湧水の状態は訪問時期や天候でも変わり得るし、いつでも同じ量が汲めるとは限らない。

待っている間、急ぐ理由がなくなった。水の音と山の音を聞く。夫婦杉の前では七百年という途方もない時間を思い、ここでは一本のボトルに水が溜まる時間を見つめる。尺度は違うけれど、どちらも山に流れている時間だった。

持ち帰った山の水で、桑の葉茶を

汲んだ湧水を家に持ち帰り、しっかり沸かして桑の葉茶を淹れた。大きな乾燥葉を茶こしに入れ、熱い湯を注ぐ。葉がゆっくり開くところまで眺めていると、取材の続きが台所で始まったような気がする。

桑の葉茶は「山のお茶」と呼ぶのが、この旅には似合う。ただし、今回使った茶葉が南川で採れたものという意味ではない。「山の水で、山のお茶を淹れる」という楽しみ方だ。湧水は外見だけで飲用の安全性を判断できないため、そのまま口にせず、十分に沸騰させて使った。

一口飲むと、錆びた吊り橋と森の中の二本の杉を思い出した。味の感じ方は人それぞれだろう。でも、どこで水を汲み、何を見て帰ったかを知っている一杯は、いつものお茶とは少し違う。

河内神社の夫婦杉を訪れる前に

河内神社の夫婦杉は高知県土佐郡土佐町南川にある。吊り橋を渡って境内へ向かうため、足元に注意し、現地の通行案内を確認したい。雨のあとや暗い時間帯には無理をしない。御神木には触れず、参拝する場所として静かに訪れたい。

七尾の湧水を汲むなら、清潔な容器を用意し、現地の案内に従うこと。水量や飲用に関する状況は、訪問当日の様子を確かめてほしい。なお、検索時に表示される一部観光ページには夫婦杉の所在地として「高須305」と記されたものもあるが、今回訪れた夫婦杉と巨木資料の所在地は土佐町南川だ。地図で訪問先を確かめてから向かうと安心だ。

まとめ|七百年の杉と、今日の一杯

山師たちの願いと感謝が伝えられる河内神社の夫婦杉。細く流れていた七尾の湧水。そして、家で淹れた桑の葉茶。別々の見どころのようで、今回の旅では一本につながった。

大きな杉の前では、こちらの時間が小さく感じられる。けれど山から持ち帰った水を沸かし、お茶を淹れると、その日の時間がちゃんと自分の暮らしに戻ってくる。

高知の山奥で見つけた、小さな幸せ。また、まっちゅうきね。

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